【脱サラして農家へ転職】振り返って思う事

尾形優季

脱サラして農家になりたい方が多くなってきた、、という噂をよく耳にします。

私は10年以上の建築営業で働いてきましたが、実家の農家に就農する事にしました。

「会社を辞めるなんていろいろ不安」

「農家って実際儲かるのかな?」

「0から農家を始めようと思うと初期投資がすごそう」

そんなイメージが頭をよぎる事と思います。

私の場合は実家が農家でしたので、0から自分ですべて始めたわけではないです。

しかも、父にほとんどおんぶにだっこの状態で働いているので大それたことは言えません。

ただ、自分の中で長年経験を積んできた建築営業という業種からの「脱サラ」は大きな決断だったと思っています。

そんな「脱サラ農家」の事を少しでもお伝え出来たらと思っています。

時間とストレスに追われる営業時代

私は大学卒業後、外壁塗装の訪問販売→小規模リフォーム→サッシ屋→大規模リフォームと転職を繰り返してきました。

前職の大規模リフォームが一番長く、過酷な勤務体系でした。

規模が大きい分、細部にわたるまでの幅広い専門性・知識を必要としており、大金も扱うので、非常にシビアな業種でした。

また、大手の会社だったので身動きもとりづらく、書類の束と毎日のように格闘していました。

ビジネスモデルも特殊で、営業からプラン提案、現場監督、アフターフォローまですべてを任されており、収入は良いものの休みの日に休んだ記憶がほとんどありません。

工事が大規模という事で、壁紙のヘコみや新設備の使い方等、少しでもお客様からご要望があれば対応してきましたので、休んでいる暇がありません。

私も責任感は人より強い自信があったので即お客様宅へ飛んでいきました。

社内に関して言えば、体育会系上司からの毎日のように叱咤を受けたり、さまざまな性格の職人さん達との付き合い等、最初の1年は生きた心地がせず時間があっという間に過ぎ去っていき、将来の事を考える余裕すらなかった。

帰宅時間の平均は深夜。

途中、働き方改革でパソコンが夜になると自動的にシャットダウンする仕組みなどが導入された為、段々とですが「将来の事を考える余裕」が出来ていきました。

正直、この時の厳しさと理不尽な出来事が雪崩のようにおそってくる毎日のおかげで現在は心が強くなった気がします。

農家に転職しようと思ったキッカケ

キッカケとは小さなもので、それでいて段階的なものでした。

農家に転職しようと思った3つのワケ

リベ大の両学長、中田敦彦のYouTube大学の影響

先輩の一言「退職したら農家をしたい」

父のケガ

リベ大の両学長、中田敦彦のYouTube大学の影響

営業時代、1日の半分くらいは車での移動時間でした。

耳だけは暇だったのでいつも音楽を爆音で流しながら移動していましたが、ふとおすすめに両学長の動画が出てきました。

動画を聞いていると、「経済的自由」、「不労所得」、「投資」、「ビジネス」、「副業」、等々の心を揺さぶられるワードが耳に入ってきて驚愕したのを覚えています。

https://youtu.be/lAAHyntHENk

続いておすすめに出てきたのが中田敦彦のYouTube大学。

https://youtu.be/A8Ux6zC7EyM

自己啓発からお金の話まで、たくさんの学びがある事に楽しさを覚えてどんどんと聞き入っていきました。

まとめると「自分の人生は他人のせいにしても仕方ない」、「成功したければ環境を変えよう」、「やると決めたらすぐに行動する」そんな言葉が強く耳に残っており、転職を考えるようになっていきました。

また、動画の内容も気になったものは「とりあえず」実践していきました。

先輩の一言「退職したら農家をしたい」

とあるイベントの日、お客様を待つ中先輩と話をしていました。

還暦を迎える先輩に辞めたらどうするのか?という内容の話をしていた気がします。

先輩が、「農業をしたい」という話を聞いて自分もイメージを膨らませていました。

人とのコミュニケーションによるストレスが非常に多い職場だった為、そういった180度別の職業に憧れるのだという話。

まさにその通りです。

その時久しぶりに「実家は農家」だった事を思い出しました。

それまで意識をする事は全くなかったし、農業というものに魅力を一つも感じていなかったので、、、

小さいころから毎日のように土をいじり、ビニールハウスへ向かう父の事を考えていました。

父のケガ

ある日母から父が転んでケガをしたと連絡がありました。

それは軽傷というには痛々しいキズ跡で、頭を打って切ってしまった感じでした。

何針か塗ったとの事で、文字で書けばそこまで大事では無いのですが、私の中では大きな出来事。

「父は年を取った」

そんな当たり前のさ事を実感したのを覚えています。

激動の毎日の生活の中で実家に帰る事も少なくなり、疎遠とまでは行きませんが「もしものことがあったら・・」と考えさせられました。

この出来事のおかげで、仕事が忙しくて大切な家族との時間が取れない、というのは本末転倒な事だと認識できました。

思えば妻と一緒にいる時間もほとんど取れず、自分はいままで何をしていたのか?

そう感じずにはいられませんでした。

30代半ばでの転職への不安

転職によくある悩みとして「転職してやっていけるのだろうか?」というのが大多数だと思います。

私の場合は実家で働くだけなので、ほとんど不安はありませんでした。

強いていえば「このまま今の仕事をし続けて、家族や家庭を顧みないまま時間を経過させてしまう」ことの方が不安に感じていました。

お金の事は自分でがんばってなんとかするしかない!と思っていたので金銭面での不安はさほどありませんでした。

営業時代に貯めたお金も少しはあるので、しばらくはそれを支えにしていこうと考えていました。(農家は儲からないとさんざん言われていましたので・・)

実際農家は儲かるのか?

農家と言えば「儲からない」というイメージをされる方が多いのではないでしょうか?

就農して1年ですが、JAさんの協力を得て出荷している状況では「なかなか儲からなさそうだ、、」というのがホンネです。

JAさんの協力が無いとまず出荷すらできない状況に陥ってしまいます。

販路を他に確保しなければ難しいですね。

スーパー等で見かける野菜の価格は仲介業者をいくつか通った後の価格なので実際に農家から出荷されている額とは全く違います。

また、天候や季節、社会情勢等いろんな関係で価格が変化してしまうのでなかなか安定もしないです。(1週間でもだいぶ変化しています)

まるで株価を見ている気分。

対策として、SNSやECサイトを活用してマーケティング活動をしたり、新たな販路を開拓していくしか方法は無さそうです。

生産量も限度がありますしね。

実際に農家へ就農した感想

実家で農業をして約1年になろうとしています。

良い事も大変な事もありますので順番にご紹介します。

実際に農家になった感想

 夏がなかなか過酷

 虫が苦手な方には地獄

 体力勝負だけど痩せない

 生産物により食費が減る

 アトピー肌にはなかなか過酷

 本当に体が資本

 ネットが普及した時代で良かった

どれも前職の営業ではほとんど考えなくてよかった事です。

クーラーの効く室内で資料作成に没頭してましたので!

夏がなかなか過酷

ビニールハウスでナスを栽培しているのですが、夏場はハウス内が35℃を超える事がよくあります。

2022年7月から農業を始めたのですが、ハウス内を片付けているだけで気持ち悪くなったのを覚えています。

父マジ尊敬します。めっちゃ軽快に作業してました。

それから1カ月ほど経過した後、神アイテム「空調服」を導入しました!

いままでは空調服なんて暑そうだしジャマそう。。。と思っていた自分が許せません。

建築営業をしている時、職人さんが空調服を夏場毎日のように着ていたのを思い出していました。

今では年中空調服をきています。冬場も着ています。

道具っていうのは偉大だなと感じています。

値段が少し高くても道具への投資はケチらない方が良いです。

虫が苦手な方には地獄

畑にはいろんな虫がいます。

https://www.tiktok.com/@kiramekifarm/video/7235116030354279682?is_from_webapp=1&sender_device=pc&web_id=7234180155634796033

それは害虫や益虫にとどまらず色んな種類が私を脅かしてきます。

もともと虫はそんなに得意では無いのですが、襲ってこない虫に対してはそこまで恐怖心や嫌悪感を抱かないので大丈夫でした。

私の妻は虫が苦手なので多分農作業は無理だと感じています笑

体力勝負だけど痩せない

農家はすごく体力を使います。そのはずです。

前職比べたら比較できないほど動いてるつもり。。。ですが体重はほとんど変わりませんでした。

歩数計で確認するも意外と移動距離も長くないです。1日4千~6千歩くらいでした。

農家で痩せられるという考えは改めた方がよさそうです。

ちなみに工場で働いている妻は1万歩を超えていました。

余った生産物により食費が減る

ナスを収穫した際、見た目が悪く出荷できないナスも出てきます。

そういったものを晩御飯にしたりするのですが、けっこう食費が減ります。

ただ毎日のようにナスを食べ続けるのはさすがに飽きる。

ただこういったナスも見た目が悪いだけなのであれば加工して出してみるのも面白いのかな?と検討しています。

アトピー肌にはなかなか過酷

私は昔からアレルギー体質でアトピー肌でした。

土を触るとかぶれるのは知っていましたが、予想よりひどく手が荒れてしまいました。

当初は素手でナスの剪定や片づけをしていたのですが、手の湿疹がヒドく、痒さで夜寝られないようになってしまいました。

このままではいけない、、、そう思い元看護士の母やネットで調べていると軍手の下にポリ手袋、その下に綿の手袋をすると良いという事がわかり、毎日実践しています。

今ではだいぶマシになりました。

なにせ作業中、手が外気に全く触れる事がないので!

1日に3回くらいは手袋を交換して作業しています。

可能な限り素肌を出さないように、大きい帽子とマスク、空調服や肌着は長袖のものを着ています。

外気に直接触れる部分は現在、目の周りだけとなりました。

毎日完全防備で畑に挑んでいます!

どちらかと言えば休日の方が日焼けするくらいです。

本当に体が資本

農業を初めて約1年経ちますが、仕事終わりに「あれ、今日は腰が痛いな」と思う日が何回かありました。

そのまま何の対策もせずに続けていると、きてしまいました。

立てなくなるほどの腰痛が

壁を伝って歩けるかどうかの状態で、寝返りですらしんどかったです。

お医者さんの話を聞くと、

分離すべり症」と言われました。

過去に骨折して骨がくっつかないままズレた状態で治ってしまっているのが原因ではないか?という事でした。

要は「筋肉が足りない+肥満」のせいで姿勢も悪くなり腰にすごく負担をかけているんだとか。

はい、1週間程何もできませんでした。

ただ家で寝っ転がってる生活をネットをみながら過ごしていました。

体は資本

その言葉が身に染みた出来事です。

農業をする以上は、動けなくなったら終わりです。

前職の営業時代もちょくちょく腰痛に悩まされてはいましたが、肉体労働ではないので勝手に痛みが治まっていました。

私は改心し、パーソナルトレーニングジムに通う事を決断しました。

ネットが普及した時代で良かった

今はネットで産地直送の野菜やフルーツが購入できる便利な時代ですよね。

販路を探すと言ってもすぐに見つかるわけではないですし、「とりあえずネットで売る」という事が出来る時代に感謝感謝です。

販路もネットで探すって方法もなくはないですよね?

また、農園の情報発信等をして認知度を広める事も出来るのでこの時代に生まれてきた事がありがたいです。

TwitterFacebookインスタグラムティックトック等で順次情報発信をしていくつもりです。

内容は今の所何も思いつきませんが。。。

とりあえずは、ECショップの開設「BASE」、産直サイトの活用「ポケットマルシェ」、「食べチョク」でナスを出店させて頂きました。

脱サラ農業を検討している方へ

私の場合、「実家が農家」だったので比較的簡単に転職出来ました。

環境が恵まれていたんだと思います。

ただ、農業を実際にやってみて個人的な意見を脱サラ農業を考えている方にお伝え出来ればと思います。

脱サラ農業を検討している方へ伝えたい

 その地域にどんな補助金・制度があるか確認

 貸農園や家庭菜園でまずやってみる

 農業をしてる人の元で一度働く(修行)

 信用金庫等の口座に貯蓄

 作物の価格をリサーチしておく

その地域にどんな補助金があるか確認

各市町村ごとにどんな補助金や制度があるのかをまず調べた方が良いです。

0から始める場合は、補助金・制度の活用は必須!

数千万円の初期投資が掛かってくるので入念に確認した方が良いのは言うまでもないです。

愛知県豊橋市を例にあげます。

愛知県豊橋市の新規就農制度

 農業体験制度(研修)

 農業経営・農業技術の研修

 農地取得手続き

 青年等収納計画認定制度

愛知県豊橋市の支援・補助金

 就農準備資金(最大150万円、最長2年)交付

 経営開始資金(年間150万円、最長3年間)交付

 経営発展支援事業(最大750万円、上記対象者は375万円)交付

 青年就農資金(限度3700万円、17年以内)融資

 農業近代化資金(個人限度1800万円、15年以内)融資

 経営体育成強化資金(負担額の80%、25年以内)融資

詳しくは豊橋市役所のHPを見て頂ければと思います。

ざっとみただけでもいろんな制度や補助金等があるので、必ず調べる事をオススメします。

貸農園や家庭菜園でまずやってみる

私は作物を育てたこともないし、親の手伝いをしたのははるか昔の話だったので知識0状態から農業を始めました。

実家が農家だったので良かったのですが、1から始める方にとっては「一度体験」してみる事をおすすめします。

やってみて気が付く事も結構あると思います。

私の場合気が付いたのは「肌荒れが加速した」って部分ですが・・・

信用金庫等の口座に貯蓄

もし開業する際の融資を受ける場合、地元の信用金庫等に口座をもっておくと便利です。

小規模・中規模の事業融資を受ける際に力強い味方になってくれます。

大きい銀行では、小規模や中規模の事業には融資がなかなか受けられない場合があります。

なので、信用金庫の口座を開設しておき、その口座に貯蓄をする事で融資を受けられやすくなる可能性があります。

また、農作物はすぐにはお金にならないので「最低限の生活資金」を貯めておく必要があります。

作物の価格をリサーチしておく

実際に農業を始めるにあたり、どんな作物がどのくらいの価格で販売されているのか?

あなたが住んでいる地域で生産量が多い物は何か?出荷先はあるのか?調べておかなければならない事は多いです。

見切り発車で好きな作物を選んでも、出荷先が見つからない場合もあります。

当面は農協と協力体制で出荷をしていき、販路を増やしていく形になるかと思います。

これから農家として取り組んでいきたい事

今後の計画として「野菜ソムリエ」の資格取得を考えています。野菜の知識とマーケティング方法を学びたいので私にピッタリと思ったからです。

また、SNSやブログを活用して煌めきナス農園の名前を広く認知してもらえたらと思います。

現在、肥料と水は機械制御により自動でナスに供給されるようになってはいます。

次に農薬散布にドローンを利用したり、ビニールハウスの開け閉めを気温や湿度により自動で行うようなスマート農業化もしていきたいです。

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